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「自社オリジナルのブランドを作りたいけど、何から始めれば良いかわからない」
「技術はあるが、自社で生み出すアイデアがない」
「下請けの仕事だけでなく、自社独自のサービスで、新しい売上の柱をつくりたい」
このようなご相談を受けることがよくあります。
メインの事業は安定してきたけれど、下請け仕事が中心で、他に売上の柱が無い。クライアントの予算や都合に会社の全収益が左右されてしまう。といった悩みを、多くの経営者や事業担当の方々が抱えています。
弊社は、デザイン会社として受託の仕事をたくさんいただいてきましたが、一方で自社ブランドも運営してきて、これらの悩みは過去に弊社も経験してきました。
ブランド立ち上げには大変な労力とコストがかかりますので、やるからには成果を出したいです。
そのために成功確率を上げる方法や判断の指針があります。
この記事が、これから自社ブランド立ち上げに関わる人にとって、少しでも手助けになれば嬉しいです。
では早速ブランドを作ってみましょう、と言う前に、少しお待ちください。
なぜ自社ブランドを作りたいのでしょうか?
実はここが、当たり前のようでいて、プロジェクトを進める途中でブレたり、そもそもの目的が何だったかを当事者間でも忘れてしまったりすることが意外と多いのです(良い意味で目的が変わっていくこともあります)。
この目的次第で、成功の定義も全然変わってきます。
またこれらは実際もっと細分化でき、例えば売上の柱を作りたいとしても、最初は少なくても長期的に続けたいのか、それともすぐ売上を立てたいのかで、達成目標もやることも変わります。
この目的に合わせて、例えば3つの方向性があります。
「ニーズがわかっているものを安く」は例えば、アイリスオーヤマが機能を削ぎ落して低価格化した商品を売る戦略があります。
「リサーチを通じて顧客のニーズを掘り起こす」は、アサヒ飲料が市場調査でビジネスマンの多くが朝にコーヒーを求めていることを明らかにし「WONDAモーニングショット」という商品を生み出した事例が挙げられます。
また「プロダクトアウト」の例としては、ガラケー中心の携帯電話市場に全く新しいコンセプト・設計・意匠で成功したAppleのiPhoneが有名です。
このようにブランド立ち上げを通じて達成したい目的によって戦略や行動も変わってきますので、「なぜ」を言語化し、いつでも原点に立ち帰れるようにすることは大事です。
それでは自社ブランドを立ち上げるには、具体的にどのような手順や手法で進めれば良いのでしょうか。
まずはアイデア、コンセプト段階として、自社の強みを洗い出したり、キーワードを出したりして、コンセプトのタネを考えます。
それから調査や分析をします。この段階で顧客のニーズが見え、ブランドを作っていく柱にすることを目指しますが、どこまで調査するかは予算やブランド立ち上げの目的にもよります。
続いて、商品やサービスのデザイン、仕入れ、価格設定といったプロダクト・サービス設計、販路や売り場の確保、広告の出稿や販促物のデザインといったプロモーションを実施します。
これらは総じて目指す目的により、どこに比重を置くか、どの順序で行うかも変わってきます。また課題が見つかった際には、前の手順に立ち戻ったりしてぐるぐるとサイクルをまわすこともあります。
以下で、これらの手順と手法を大まかにご説明します。
初期段階として、自分たちの強みやアイデア出しをして、コンセプトの元になるものを打ち出していきます。
もし自社の強みを無視して作り始めてしまうと、結局は競合に対して技術や価格の優位性を保てない、維持できないといったリスクがあるためです。
ここでは下記のような手法が役に立ちます。
◆強みの洗出し
SWOT分析という手法が有効です。
これは自社の外部と内部の環境を、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4つの要素に分解して分析する手法です。
これらの要素は、普段は仕事をする中で、当たり前のように理解していると思いがちですが、あらためて図に起こすことで、自社の強みと弱みを外部環境と比較して整理することができます。事業を開始する時や、途中で軌道修正する際にも役立つフレームワークです。
◆キーワード出し
ブレインストーミングとして、思いつくアイデアを自由に、キーワードで出していきます。
自由な発想が出てくるように、最初はあえて個々のアイデアを否定しないようにして、次の段階で仮説を立てて絞り込んでいくのが良いです。
続いて、市場のニーズを調査・分析して、前項で出したアイデアとコンセプトが成果を上げることができるかを仮説構築します。
この工程は、市場や顧客ニーズを元にする「マーケットイン」においては特に重要です。
例として、下記のような分析手法を必要に応じて活用するのが良いでしょう。
◆基本として4P分析
4P分析とは、ビジネスをする上で非常にわかりやすい要素に分解して施策に落とし込むことができる、とても有用なフレームワークです。
下記の4つの「P」に分解して、それぞれの内容を書き出し、決めていきます。
商品・サービスを提供するにあたり、最も基本的で網羅的な要素を洗い出せるため、まず4P分析をお勧めします。
◆市場と顧客のリサーチと分析
既存のデータやアンケートを活用して、顧客のニーズを明らかにすることを目指します。
数値化できるデータから統計的な方法を用いて行う「定量調査」、数値では表せない印象や感想など「質」的な情報を扱う「定性調査」があります。
既存のデータが活用できれば、調査担当者が情報を探してまとめる人的コストで済みますが、アンケートなどでゼロからデータをとる場合はそれ相応の実費がかかるため、予算に応じて取捨選択されます。
◆カスタマージャーニー
顧客行動を理解し、ブランドに接する顧客が体験するフローを構築するために役立ちます。
昨今よく言われるUX(ユーザー・エクスペリエンス)の設計にも該当します。
なかなか思いつかない場合は、まず消費者行動のフレームワークとして知られる「AIDMA」や「AISAS」をフローに当てはめて、そこから独自に加筆修正していくことが近道になるでしょう。
以下は主に4P分析の項目に沿って解説します。
ブランドの要として、商品・サービスを決めます。
先に出したアイデア・コンセプトを磨き込み、ブランド立ち上げの目的を見据えた商品やサービスを見える形にしていきます。
ここで独自性を出すには、例えば単に「冷蔵庫」ではなく「一人暮らしの面倒くさがりの30代男性が、調理をせずに簡単に食事をとれるライフスタイルの冷蔵庫」といった鮮明さに落とし込めることが望ましいです。
また、商品やサービスのデザインを作ることもこの領域から繋がっています。
ブランドの顔とも言えるデザインの作り方として、興味がある方はぜひ以下の記事もお読みください。
商品・サービスの値決めをします。
これは非常に重要な要素で、製造原価や仕入れコストも見ながら、ターゲット顧客に受け入れられる価格設定をすることになります。
単に安ければ良いというわけではなく、例えば高所得者層やマニアをターゲットにするために、あえて高価格に設定して特別感を出すようなプレミアム戦略もあります。
一方で、市場で売れているボリュームゾーンの金額に合わせたり、少し下回る価格設定にすることで、お得感を目立たせる戦略もあります。
ここでは最もわかりやすい例は、実店舗で売るのか、それともインターネットで売るかといった選択です。
例えばネットで売る場合、Amazonを売り場として選ぶことで、自社のオンラインショップを立ち上げるより、集客力があるプラットフォームの恩恵を受けることができます。
集客とは単にサイトを公開すればできることではなく、広告やSNSなどの様々な仕組みを利用したり、施策を打つことで認知が広がっていくことを理解する必要があります。
また従来からの方法としては、代理店のネットワークを活用して販売することも選択肢です。
4Pの最後は販促です。これは非常に多岐に渡りますが、最も基本的なものは広告です。
WEBやメディア、ポスターやチラシ、看板といった広告の種類は多様ですが、その内容だけでなく掲載場所やターゲットによって効果にも大きな差が生じます。
またキャンペーンやイベントも販促にあたり、これらを組み合わせて行うことで相乗効果が見込めます。
SNSが普及してからは、その拡散力やインフルエンサーの影響力が強く、費用対効果が非常に高くなるケースもあります。
一方で、その影響力の強さから、景品表示法や薬機法など、規制に引っかからないよう注意が必要です。
ここまで自社ブランド立ち上げの手順と手法をざっと紹介してきましたが、必ずしも全てが必要というわけではなく、また単に実施したからうまくいくわけでもありません。
弊社も創業以来、何度もブランドを立ち上げて、成果を上げられなかったことが幾度とあります。
しかし、それでも試行錯誤を繰り返し知見を積むことで、精度を高めていくことが可能です。
また弊社はデザイン会社として、これらの分析や設計の要素が「デザインを作る」仕事に内包されていると感じています。
その意味でも私たちは、デザインが人の心を動かして、ブランドを形作っていく「芯」になると信じています。
ブランド作りもデザインも、ご相談がありましたらお気軽にご連絡ください。